ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

勝手に芥川賞選考会

『ディレイ・エフェクト(宮内悠介)』

う〜ん、あんまり言うことはないんだよなあ。 文学界もとい、出版界がとにかくこの人にそろそろ取っておいて欲しい、くらいの名前なんだろうなあってくらい、候補になった回数が多い(直木賞3回、芥川賞2回候補)。 あまりに突飛な設定に、適応するのに何…

『おらおらでひとりいぐも(若竹千佐子)』

孤独と対話がテーマ。 このように、脳内で何人かの自分が対話している老人は多いと思う。 著者は74歳で文藝賞初受賞。 老女の脳内で繰り広げられる対話と追憶。 年の功らしく、作中に太字になりそうな部分は多い。 桃子さんはさっきから堰を切ったように身…

『愛が挟み撃ち(前田司郎)』

2018年冬、芥川賞候補作。 今回は「勝手に芥川賞選考会(1/15)」の開催を前にアップ。 ※本物の選考会は1・16、築地の新喜楽にて。 前田司郎さんは、五反田団を主宰する劇作家、演出家、作家。 09年には『夏の水の半魚人』で、三島賞を受賞している。…

『影裏(沼田真佑)』

今日の 芥川賞受賞作発表の前に上げておくんだった。 先ほど、深夜のニュースで作者と受賞作の短評を聞く。 「震災小説」と説明されていた。 記者会見での質問にあったのだと思うが、「自分は岩手に住んでいるので、禊のつもりで書いたつもりが、ないわけで…

『星の子(今村夏子)』

「第三回 勝手に芥川賞選考会」を来週火曜(7/18)に控え、全候補作品を読みました。 今回はノミネート4作品と例年に比べて候補作品が少なかった。 2017年上期 候補作品 芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会 今村夏子さんは前回の『あひる』に続き…

「しんせかい(山下澄人)」

第156回芥川賞が、山下澄人氏の「しんせかい」に決まった。 我々「勝手に芥川賞選考会」では、二番目に評価の低い作品だった。 「これが受賞したら抗議文送ろうぜ」とまで言っていた作品だ。 正直、驚いている。 今回の候補五作は前回と比べても意欲作が…

『ジニのパズル(崔実 チェ・シル)』

会社の先輩と「勝手に芥川賞選考会」というものを実施した。 根津のモダン純喫茶「カヤバ」にて(本物は築地の新喜楽)。 それぞれに候補作を読み込み、採点、批評していった。 体裁や文章や小説としての上手さでは低い得点だったと思う。 しかし、候補作の…

『美しい距離(山崎ナオコーラ)』

「貫禄」という言葉がふさわしいのだろうか。 候補作品の中では(やはり)一番上手いと思った。 だって5回目のノミネート。いいかげんなんとかしてくれといった具合だろうか。5回目ともなると、いちいち版元の編集担当と待ってもいないと思う。残念会とい…

『あひる(今村夏子)』

第155回(16年夏 7月19日決定) 芥川賞候補作。 「勝手に芥川賞選考会」での講評と、ここ(ブログ)での”いい悪い”はもちろん判断基準とそのレベルが異なる。「勝手に選考会」の3人の選考委員のうち、この作品に×をつけた委員は2人いた。彼らは端的に「…

『短冊流し(高橋弘希)』

第155回(16年夏 7月19日決定) 芥川賞候補作。 会社の先輩から勝手に「芥川賞選考会」をやると言って社内便で送られてきたので読む。図らずもナオコーラの同じ候補作品と同じ場面や状況の設定があった。それも時代か。 子どもの不調から始まる暗くて短い…

『コンビニ人間(村田沙耶香/文学界6月号)』

村田沙耶香の小説は初めてだった。 芥川賞候補作品が発表される前に読んだので、同賞選考のスタンスでは読まなかった。 業界的には、いま一番取らせたい人なんだろうが、キャラクター造詣や世界観にいささかエンタメ感が滲む(例えるなら、読後感が”世にも奇…