ここがパンチライン!(本とか映画、時々 新聞)

いま、物語で大事なのはあらすじではない。そこで語られている言葉とリアリティだっ!!ということで、卑怯で弱い人間を愛したい。人間の野蛮さ、愚劣さから目を背けたりしたくない。おのれ自身の端緒(根っこ)が絶えず更新されてゆくそんな経験をする、そのための記録。大江健三郎と吉田修一と。三島と太宰と。村上春樹と中村文則、小島信夫と舞城王太郎。カズオイシグロにミシェル・ウェルベック。カーヴァーとチャンドラー、ブコウスキーにキューブリック。コッポラにデビット・フィンチャー。ウディ・アレンもケヴィンスペイシーも。談志だって

小説 

『万延元年のフットボール(大江健三郎)』

1988年初版刊行。 繰り出されるイメージは大江健三郎作品のイメージそのものだ。 石の礫。不条理な事故や怪我。生まれた子に障害がある。 穴にうずくまる僕。異常に太り出した女(ジニ)。森に棲む隠遁社(ギー)。 顔を朱色に塗って縊死した友人..。 こ…

『クロマグロとシロザケ 〜東京夜話〜(いしいしんじ)』

「つらいのはな、速く泳げないことなんだ。自分が泳ぎたい速度で泳げなけりゃ、泳いでるって気にならないだろう」 「なにかやらなくっちゃ、って感じを思い出すね」彼は巨体を上下に揺らした。「ずいぶん長い間、一匹だったんだ。一匹だと、やっぱり自分はわ…

『掏摸(中村文則)』

財布はポストに入れれば、郵便局から警察に行き、免許証の住所に戻る。指紋を拭き取り、ポケットにしまった。ホストは薬でつかまりかもしれないが、それは自分に関係したことではなかった。 この金は昨日の痴漢から取ったものだが、その前の所有者は不明だっ…

『フィッシュストーリー』

伊坂の短編。 嫁が一番好きな話だ、というので再読。 二十数年前と現在、さらに三十数年前とが繋がる。ある音楽で。 息子の正義、ハイジャック、ミュージシャンのレコーディング。 まさに、風が吹けば桶屋がもうかる。 めぐりめぐって「彼らの音楽が、世界を…

『銃(中村文則)』

『銃』を再読。 大学生の抱える退屈と狂気。何かとすぐセックスという男子大学生のメンタリティや、銃を持っていることの落ち着きと狂気。 クライマックスは電車の中で。ラスト2行は現代の狂気そのもの。そんな狂気にもリアリティがある(ような気がする)か…

『R帝国(中村文則)』

中村文則として、書かずには済まされないテーマ(という位相)だったのだろう。 しかし、破滅的な展開において愛とか小さい頃の出会いについてのみ首尾よく上手い具合に(つまりはご都合主義的に)ことが運ぶのは興ざめを禁じざるをえない。 悪や悪意を具現…

取り替え子 -チェンジリング-(大江健三郎)

亡き義兄、伊丹十三をモデルに。 田亀での、吾郎との会話。 cf.千樫はそこまでを区切りに、田亀をとめた。 兵隊ベッド... これは受け身の事故ではなく、自分の積極的な表現行為が引き出したものであって、このように、またこれからもヤクザと闘い続けること…

『文学の淵を渡る(大江健三郎×古井由吉)』

先生は聖書の同じところに即して語られました。「娼婦と結婚する」という言葉がありますでしょう。僕たちキリスト教の外側の人間は、「娼婦と結婚する」という言葉を見ると、まあ比喩として考えます。ところが、門脇神父のようなキリスト教の専門家は、それ…

『サラバ!(西加奈子)』

読んでから随分時間が経ってしまった。 読まず嫌いしてた西加奈子だったが、とてもいい書き手であることが分かった。 うれしい。 そんで、又吉たちが「西加奈子の小説を読んで、自由に書いていいんだ」と思ったみたいなくだりが分かったような気がする。 現…

『ディレイ・エフェクト(宮内悠介)』

う〜ん、あんまり言うことはないんだよなあ。 文学界もとい、出版界がとにかくこの人にそろそろ取っておいて欲しい、くらいの名前なんだろうなあってくらい、候補になった回数が多い(直木賞3回、芥川賞2回候補)。 あまりに突飛な設定に、適応するのに何…

『おらおらでひとりいぐも(若竹千佐子)』

孤独と対話がテーマ。 このように、脳内で何人かの自分が対話している老人は多いと思う。 著者は74歳で文藝賞初受賞。 老女の脳内で繰り広げられる対話と追憶。 年の功らしく、作中に太字になりそうな部分は多い。 桃子さんはさっきから堰を切ったように身…

『明暗(夏目漱石)』

朝日新聞での連載作品。人間の利己(エゴイズム)を扱った近代小説。未完。 以下、メモ。 津田由雄30歳、会社員。 →新婚の細と淡白な会話 →父親が金を送ってくれない吉川にでも借りるか →叔母さんから「あんたは贅沢すぎるよ」 →叔母甥で結婚観を議論 →姪っ…

『往復書簡:初恋と不倫 (坂元裕二)』

不帰の初恋、海老名SA。カラシニコフ不倫海峡。 不帰の初恋、海老名SA どうして三崎さんには僕が見えるのですか。不思議です。 そういうことに旅のしおりを作る人はいません。 豆生田にはチャーハンをおかずにしてご飯を食べる特技がありました。 悲しみ…

『罪と罰(ドストエフスキー 工藤精一郎訳)』

ロージャの母: でも、ことわっておきますけど、あの方はわたしが書いたよりもいくらかやわらかく言ったんですよ。それがわたしはその言い回しを忘れて、意味だけを覚えているものだから。 母からの手紙を読んで、ラスコーリニコフ: 心臓がはげしく動悸し、…

『銀の匙(中勘助)』

とにかく、子ども時分の思いや考え方をここまでよく覚えているな、と思う。 幼い頃からもの心つくまでの主人公(否、これは筆者そのものだ)の心情を、みずみずしくごう自然な文章で綴られる。 主人公は、体が弱く育ちの遅れた神田っ子。 甘えん坊の幼少期。…

『忍ぶ川(三浦哲郎)』

60年、芥川賞受賞作。 二人の姉は自死、兄が失踪、下の兄は信頼されていたが家族親戚から金を借り後逐電、などつらい経験を持つ学生が料亭で働く自分にとっての100%の女性に思い詰め、心通わす。 村上春樹作品(やたら人が死ぬという点でノルウェイ限定か…

『この人の閾(保坂和志)』

小田原での人との約束時間まで少し時間があったので、大学時代のサークルの友だちと久しぶりに会おうという話。その、きまぐれ感、なんとなくな設定はこの人の小説そのものだ。 「ふうん。 三沢君って、昔からけっこうヒューマニスト的なところがあったわよ…

『伸予(高橋揆一郎)』

83年6月が一刷である。 第79回芥川賞受賞作品。 「芥川賞に偏差値をつける」という書籍で知った。 高橋揆一郎。カッコイイ名前。 伸予。元女教師。たって戦前は、って話。 30年ぶりに、惚れた教え子と会う。自ら自宅に招いて。 積極的な女である。 今だっ…

『細雪(下)』

幸子の心情描写が多い巻。 姉妹の何気ない会話が醍醐味だろう。 女とは、仕事もせずに家にいると、細かいところまで言葉を交わしているのか、と感心するほどである。 ちなみに、作中トピック箇条書きという野暮なことをするとすると、 ◆ 帝国ホテルにアメリ…

『細雪(中)』

こいさん(末の妹 妙子)をメインにした巻ですね。 奥畑の啓坊の花柳界遊びの噂。妙子洋行の目論み。 大水で九死に一生。英雄板倉の妙子救出。 啓坊への不信と板倉への気持ち。 男の入院、脱疽、死。 と要点書き出すと、なんのことはないつまらなさですが。 …

『フラニーとズーイ』

村上春樹訳。 フラニー編がすごい好きだ。 世の中の、自分の回りの何もかもがクソばっかに思えて、気に入らないときってのは確かにある。 それは、彼氏や恋人であっても、当然その例外じゃない(何なら、恋人なんて分かり合えない存在の最たるモンだ) ここ…

『細雪(上)』

谷崎である。細雪である。 この歳になって、日本の小説、否、近代文学の素晴らしさがよく分かるようになってきた。日常や生活に垣間みる、心情と風雅の機微(言語化)。 新しいものではなく、古くて今でも残っているものを繰り返し読むべきだ、そう思うよう…

「しんせかい(山下澄人)」

第156回芥川賞が、山下澄人氏の「しんせかい」に決まった。 我々「勝手に芥川賞選考会」では、二番目に評価の低い作品だった。 「これが受賞したら抗議文送ろうぜ」とまで言っていた作品だ。 正直、驚いている。 今回の候補五作は前回と比べても意欲作が…

『宇宙を織りなすもの(上) ブライアン・グリーン』

喫煙所でタバコ吸ってたら関連会社の兄ちゃんが、この分厚い本読んでた。 文学ばっかりやってる俺たちも、全然気にならないわけじゃない。 宇宙について。 難しい計算やモデルの解説ぬきで、宇宙や量子について分かりやすくアプローチする。 著者の態度は生…

『宴のあと(三島由紀夫)』

1960年、実在の人物をモデルにした小説とされる。 発表後、訴えられる。 初の「プライバシー権」対「表現の自由」の対決だった。 福沢かづ。雪後庵。野口雄賢。永山元亀。選挙参謀山崎。佐伯首相。奉加帳。 (畔上輝井。般若苑。有田八郎。1959年都知事選。…

『プラットフォーム(M・ウェルベック)』

性的な充足をセックス産業から得ていた僕。 旅行会社でキャリアアップを重ねていた恋人との性的耽溺。 セックス観光のある企画によって、かれらは絶望的な夜に遭遇することになった。 僕は礼儀正しく、真面目で、上司からも同僚からも評価されている。しかし…

『微笑(小島信夫)』

戦地から復員してはじめて、四歳になった息子と出会った。 僕がはじめてじぶんの息子にめぐりあったのは四年ぶりで戦地から復員した時で、僕は自分の息子であるというより、何か病気の息子であるようなかんじにおそわれた。 僕はそうしながら、痺れるような…

『濹東綺譚(永井荷風)』

荷風荷風っと、日々の記録である断腸亭日乗よりもこちらっの方がこの人のしょーもなさが感じ取れる(私は永井荷風のことを面白い人だとは思うが、昨今の巷の評価のように“粋”だ“洒脱”な江戸人だと云って、いたづらには称揚したくはない)。 あと、木村荘八の…

『憂国(三島由紀夫)』

心中、それが一番美しいと三島は云った。 おそらく現代人には分からない感覚だろう。 「死んではダメだ。自死は罪深い、ましてや誰かを巻き添えに死ぬなんて愚かだ」まっとうな現代人はそう言うだろう。 しかし、それは平和な時代を生きているわたしたちの標…

『はっとする1行 出会いたい』井上荒野、角田光代、川上未映子(7月31日付 朝日新聞)』

三人の作家の「読んだ小説の魅力を逃さないために」。 さすが、みな第一線の作家。 言葉が有り体でなく、実感もちゃんとこもったものだ。 角田さんも学生時代の自分と重ねて「20歳くらいの頃は読んでいるものが限られているから、小説とはこんなものだと思っ…