ここがパンチライン!(本とか映画、時々 新聞)

いま、物語で大事なのはあらすじではない。そこで語られている言葉とリアリティだっ!!ということで、卑怯で弱い人間を愛したい。人間の野蛮さ、愚劣さから目を背けたりしたくない。おのれ自身の端緒(根っこ)が絶えず更新されてゆくそんな経験をする、そのための記録。大江健三郎と吉田修一と。三島と太宰と。村上春樹と中村文則、小島信夫と舞城王太郎。カズオイシグロにミシェル・ウェルベック。カーヴァーとチャンドラー、ブコウスキーにキューブリック。コッポラにデビット・フィンチャー。ウディ・アレンもケヴィンスペイシーも。談志だって

小説 

『暁の寺(三島由紀夫)』

豊穣の海 の三作目。 本多の別荘 本を取り去った突き当たりの壁には小さな穴が穿たれている。 清顕と勲については、かれらの人生がそういう水晶のような結晶を結ぶのに、いささかの力を貸したという自負が本多にはあった。 (いまや金持ちである本多の性癖 …

『アンナ・カレーニナ 下 (トルストイ)』

ドリイは反駁しなかった。彼女は急に、自分がアンナとはもうあまりに遠く離れてしまったのを直感し、ふたりのあいだにはもうけっして意見の一致することのない、したがって口に出さないほうがいいような疑問が立ちはだかっているのを感じたのであった。 子供…

『アンナ・カレーニナ 中 (トルストイ)』

(中巻では、リョーヴィンの農業否、労働を基にした人生哲学の開陳を、アンナは夫との離別、およびこの恋が本当の愛なのかの猜疑と葛藤を、カレーニンは不得意な感情生活と向き合い、次第に冷めていく妻への愛を語り。この選択は正しかったのか、私を彼を幸…

『アンナ・カレーニナ 上 (トルストイ)』

幸福な家庭はすべてお互いに似通ったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである。 オブロンスキー家ではなにもかも混乱してしまっていた。 キチイはヴロンスキーがワルツに誘うのを待っていたが、ヴロンスキーは誘わなかっ…

『鍵のかかった部屋(P・オースター)』

オースター作品の中で一番好きな小説だ。 NY三部作の一つだというが、ストーリーテリングが洗練されていて、 内面ミステリの教科書のように感じられる(もちろん教科書テキストのように退屈で凡庸なものではない)。 書き出しはこうだ。 いまにして思えばい…

『文章讀本(谷崎潤一郎)』

(駿河台下の角、古い雑居ビル) 口語文といえども、文章の音楽的効果と視覚効果とを全然無視してよいはずはありません。 大人は小児ほど無心になれないなれないものですから、とかく何事にも理窟を云う、地道に練習しようとしないで、理論で早く覚えようと…

『巨怪伝 〜正力松太郎と影武者たちの一世紀〜(上)』

59年6月25日に行われた、天覧試合の回想からはじまる。 天覧試合は全生涯を賭けた最後の夢。 遡る三十六年前の大正十二年、警視庁警務部長だった勝利機が、テロリストによる摂政宮の狙撃、いわゆる虎ノ門事件の警護責任をとって免官に追い込まれていた。 正…

『命売ります(三島由紀夫)』

元々68年にプレイボーイ上で連載していたものが、版元が新装した帯をきっかけに昨年売れた三島作品。 「三島由紀夫」という名前と、「極上のエンターテイメント」という売り言葉の掛け合わせでみんな買わされたんだろう。 三島由紀夫の優れた小説を知って…

『いやな感じ(高見順)』

売春宿の女にホレそうで嫌だ。 初恋だ。身請けしよう。みたいな冒頭シーン。 火の玉みたいな向こう見ずな男がテロリストとして、女に惚れっぽいが、身を立てようとする。 基本的には、女郎屋とか淫売屋が、生活の中にある文化。 戦争と、政治と、血があるの…

『淵の王(舞城王太郎)』

舞城作品において、映画でいうと予告編に使われそうなやヴァイシーンはサイズが崩れる。言葉も崩れて、どがががががががががががあああみたいな文字列を見ると、ゲシュタルト崩壊的感覚を抱かされて気持ち悪くなる。 この作品のクライマックスシーンに、ガン…

『地図と領土(M=ウェルベック)』

写真家のち画家、ジェド。 芸術と女性との別れ。 友人であり、作家ウェルベックの死。 そして、愛への、友人への、父の生、自らの人生への諦め。 沈黙が続いていたが、父がそれを破りたがっている様子はまったくなかった。 こういう家族のあいだの会話という…

『悲しみのイレーヌ(ピエール・ルメートル)』

主人公はカミーユ・ヴェルーヴェン、司法警察の中年警部。 過去の犯罪小説になぞらえられた殺しの数々。 漏れる捜査情報、新聞紙面化される捜査の進展。 忍び寄る悲劇の予感。 内部の疑心暗鬼と、捜査チーム内の裏切り。 序盤から、妻の妊娠が不吉の暗示とし…

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(村上春樹)』

どんな映画でも本でも、個人がパッケージにアクセスしやすい時代になった。 録画機に何本もの映画や映像を貯め、amazonで小説が1円で売りに出されている。 いつでも安く視られるというその意識環境は、文芸や映画の旬というものを失わせている。作られて間も…

『ダンス・ダンス・ダンス(下)』

三人の消えた娼婦と一人の俳優と三人の芸術家と一人の美少女と神経症的なホテルのフロント係。 (女房に出て行かれて、北海道のホテルを訪れたくて、受付の女性と出会って訴えかけられるものがあって、ホテルに泊まっていた少女の東京帰り付き添いを託されて…

『ダンス・ダンス・ダンス(上)』

学生の頃から、読むのは何回目か。 さすがに、ロレックス、港区、メルセデス、経費、高度資本主義社会、、そういったシミュラークル的名詞に古びた印象を受けた。 そりゃそうだ。古びなきゃおかしい。30年も前に書かれたの小説なのだ。 自分に対するこの作…

『わたしたちが孤児だったころ(カズオイシグロ)』

こんなにも明白はタイトルなので、説明されないと(あるいはしっかり予測を立てないと)そのタイトルが持ってくる意味がわからない。ましてやこの人の小説なら、何かがあるのだ。 彼の小説は、「人間がもっている幼少期の記憶の曖昧さ」に根ざしている。誰も…

『暗室(吉行淳之介)』

孤独と性愛の調べ。 最小限の、引用に留める。 曖昧なものに一応具体的な形を与えておきたかった。 ときには際どい冗談を言い合う仲だが 津野木との間には、危険なものが沢山ある。 「いけないね、人生にたいしてそんなに消極的になってはいけない」そういう…

『スクラップ・アンド・ビルド(羽田圭介)』

フリーター、25歳、健斗。 実家で同居するじいちゃんは、身体も思うようにならなくることが多く「はやく迎えにきてほしい」と弱音ばかり吐くようになっている。 薬漬けの寝たきりで心身をゆっくり衰弱させた末の死を、プロに頼むこともできないのだ。 湯温…

『あなたが消えた夜に(中村文則)』

冒頭の夢の話(あるいは昔から悩まされる悪夢や光景)は、この人のお約束だ それは主人公の罪悪か性的な原体験である事が多い 彼は刑事である。 大きな事件や連続殺人で捜査本部が設置されると担当所轄と警視庁の人間が一緒に動く 警視庁の女性刑事小橋さん…

『職業としての小説家(村上春樹)』

かなり正直に誠実にお話しされています。 この人のついて、いまさなどう言うでもないです。 これを読んでまた村上春樹の小説が読みたくなった。それだけです。 ・・・多くの学生と同じように、その運動のあり方に幻滅を感じるようになりました。そこには何か…

『テロリストのパラソル(藤原伊織)』

[主人公の人物造形] ・小さなバーのバーテンやってる・メニューはホットドックだけ(めちゃうま)・アル中でウィスキーばっか飲んでる・若い頃、学園闘争の縁で前科あり・ピンチのときこそ軽口たたく・気が強い女が好き(当時も娘も)[話のあらあら筋]・公園…

『火花(又吉直樹)』

文藝春秋、受賞作掲載号 なるべく先入観を排して、読もうと思っていた。とりわけ最近、文春の役員の方と知り合ったこともあり、「プロモーションとしてではなく、時代と文芸者の評価がしっかりなされた受賞だと思いたい」という点もあったからだ。 まあそも…

『恋する原発(高橋源一郎)』

もう、とにかく小説をポップにする人。ちんことかまんことかダッチワイフとか使い過ぎ。政治的な主張や思いを、AVにくるんで徹底的に戯画してふざけて描く。 徹底的にポップな舞台立てに、真理や”ほんとう”を打ち立てるのは容易じゃない。ただ、その構造物…

『奔馬(豊穣の海・第二巻/三島由紀夫)』

三島の文章の美しさは、その心象と個人の意識を描き切り、卓越した表現で言い得ているところだ。そんな細かな機微をよくぞ言葉にしたな、といった具合に。 純粋性や無垢な精神の表象は、不純なものがなく洗練されて美しい。 父の密告 ↓留置場で射精 ↓俺は愛…

『デブを捨てに(平山夢明)』

登場人物は金がない。社会の底辺。日雇いかその日暮らしだ。稼ぎか食い物のために、奇天烈な人間たちに関わって悪に関わる。 性と暴力に遠慮がなく、描写もグロテスク。乾いたユーモアと設定のシュールさが、癖になる。 また、メタファーが簡潔にして言い得…

『ねじまき鳥クロニクル(第1部 泥棒かささぎ編)』

テーマは”夫婦の間の闇”だろう。謎の女からの電話は(性的な、否、精神的な)”誘惑”である。 自分はこの女について何を知っているんだろうと自問した。 僕がこうして送っている結婚生活というのはいったい何なんだろう?そしてそのような未知の相手と共に生…

『遠い山なみの光』カズオイシグロ

カズオイシグロは、不条理の中に生きる人々の感じていることや息づかいを捉えるのがうまい。 悦子と佐智子との会話は、佐智子が自分本位に言いたいことを言うだけで、なかなか成立しているようには見えない。しかしやがて、悦子の言っている事も自分本位では…