ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

『言い寄る』田辺聖子

欲望に従順でありながら、特定の異性には純情な恋心を募らせる乃梨子

男に依存しなければ生きていけないが、人生なるようになる考えの美々。

五郎を射止めたのはどっちだったのか。


終盤、剛が暴力を振るった時点で、悲劇的結末と、でも明日は前を向いて歩いているはず」みたいな予兆だけ感じさせる結末かと思いきや、剛が戻ってきてやり直しを迫る。

彼得意の寝技が最後まで発揮されて、「私は剛と一からやり直すと思う」で一応の結末を迎える。

田辺聖子の得意な境地、「一人になってふとした瞬間に溢れてくる涙」みたいな部分を期待していた。ジョゼ虎のように、エンドロール前には配置されていなかったが、物語の合間合間に垣間見えた。いったい私は何をやってるんだろう、と。

駄目な男の駄目さは炸裂している。
でもそれを許し、決して恨んだりはしない人間のいい女性がいる。
とことん、自由な女のそれに伴う不幸も描きながら、最悪な悲壮感は感じさせない。
大阪の女性作家の底知れぬ明るさである。生命力である。

人生は、最後までわからないのである。