『人間・この劇的なるもの(福田恆存)』
冒頭の一章を興味深く読む。
その後は、劇作家の演劇論。
愛は自然にまかせて内側から生まれてくるものではない。ただそれだけではない。愛もまた創造である。意識してつくられるものである。
女はそう思う、だが男にはそれがわからない。
愛情は裏切られ、憎しみは調停され、悲しみはまぎらされ、喜びは邪魔される。
(「嘔吐」の女が)接吻の儀式を完成しようとした女の下には、心ないいらくさがあった。さらに自分の役割を理解し協力してくれぬ恋人がいた。
程度の差こそあれ、だれもが、なにかの役割を演じたがっている。
生きがいとは、必然性のうちに生きているという実感から生じる。