「サッカーは死んだ。(蓮實重彦 7/19付 朝日新聞)」
国民や国の期待を背負うと、どれほどスポーツがスポーツ以外のものに変化していくか。
W杯は命懸けの『真剣勝負』に見えてしまう。お互いもう少しリラックスしなければ、やっている選手もおもしろいはずがないし、見ている側も楽しめない。
勝ち上がるのを最優先すれば、どうしても「岡田化」が進む。今後はさらに防御重視の傾向が強まるでしょう。運動の快さを放棄してまで、国が期待する勝利にこだわる。そんな『スポーツの死』には付き合いたくない。W杯はそろそろ限界だ、とつくづく思いました。
あれはもうサッカーではない。ドイツが7点も取ってしまったことは果たして成功なのか。『サッカーをサッカーではないものにしてしまった』という点においては、醜い失敗だったとしか思えません。誰かがドイツ代表の精神分析をやらなくてはいけない。どこまで点が取れるのか、面白いからやってみよう、というぐらいの気持ちになっていたと思うのですが、どうみても7点も取ってはいけない。何かが壊れるし、人の道から外れているとしか思えない。
サッカーから運動の喜ぶを奪うW杯という枠組みが、選手たちの精神とゲームそのものを、いかに異様なものにしてしまっているか。それを象徴する試合でした。サッカーは死んだ、と思いました。