ここがパンチライン!(本とか映画、そんでときどき新聞の)

いま、物語で大事なのはあらすじではない。そこで語られている言葉とリアリティだっ!!ということで、卑怯で弱い人間を愛したい。人間の野蛮さ、愚劣さから目を背けたりしたくない。おのれ自身の端緒(根っこ)が絶えず更新されてゆくそんな経験をする、そのための記録。大江健三郎と吉田修一と。三島と太宰と。村上春樹と中村文則、小島信夫と舞城王太郎。カズオイシグロにミシェル・ウェルベック。カーヴァーとチャンドラー、ブコウスキーにキューブリック。コッポラにデビット・フィンチャー。ウディ・アレンもケヴィンスペイシーも。談志だって

『少数派からのありがとう 高橋源一郎 (2014年5/29 朝日新聞朝刊)』

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14年3月、台湾の立法院が数百の学生によって占拠された。

陸中国と台湾の間で市場開放に関して交わされた「中台サービス貿易協定」への反対。学生たちは、規律と統制を守りつつ、院内から国民に向けてアピールを続ける。

占拠が20日を過ぎ、学生たちの疲労が限界に達した頃、立法院長から魅力的な妥協案が提示された。葛藤とためらいの気分が、占拠している学生たちの間に流れた。その時、ひとりの学生が、手を挙げ、壇上に上り「撤退するかどうかについて幹部だけで決めるのは納得できません」といった。
この後、リーダーの林飛帆がとった行動は驚くべきものだった。彼は丸一日かけて、占拠に参加した学生たちの意見を個別に訊いて回ったのである。

最後に、林は、妥協案の受け入れを正式に表明した。すると、再度、前日の学生が壇上に上がった。固唾を飲んで様子を見守る学生たちの前で、彼は次のように語った後、静かに壇上から降りた。
「撤退の方針は個人的には受け入れ難いです。でも、僕の意見を聞いてくれたことを、感謝します。ありがとう」

 それから、2日間かけ、院内を隅々まで清掃すると、運動のシンボルとなったヒマワリの花を一輪ずつ手にもって、学生たちは静かに立法院を去って行った。

 

この小さなエピソードの中に、民主主義の本質が浮かび上がったようだった。だが民意はどうやってはかればいいのか。結局のところ、「多数派」がすべてを決定し、「少数派」は従うしかないのだろうか。学生たちがわたしたちに教えてくれたのは、「民主主義とは、意見が通らなかった少数派が、それでも、『ありがとう』ということのできるシステム」だという考え方だった。