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ここがパンチライン!(本とか映画、そんでときどき新聞の)

いま、物語で大事なのはあらすじではない。そこで語られている言葉とリアリティだっ!!ということで、卑怯で弱い人間を愛したい。人間の野蛮さ、愚劣さから目を背けたりしたくない。おのれ自身の端緒(根っこ)が絶えず更新されてゆくそんな経験をする、そのための記録。大江健三郎と吉田修一と。三島と太宰と。村上春樹と中村文則、小島信夫と舞城王太郎。カズオイシグロにミシェル・ウェルベック。カーヴァーとチャンドラー、ブコウスキーにキューブリック。コッポラにデビット・フィンチャー。ウディ・アレンもケヴィンスペイシーも。談志だって

『命売ります(三島由紀夫)』

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元々68年にプレイボーイ上で連載していたものが、版元が新装した帯をきっかけに昨年売れた三島作品。

 

三島由紀夫」という名前と、「極上のエンターテイメント」という売り言葉の掛け合わせでみんな買わされたんだろう。

 

 三島由紀夫の優れた小説を知っていて、さらに極上のエンターテインメント小説を知っている人間にとっては、冗談みたいな作品だった。(ましてや私のマイベスト10冊を挙げるとき数ある三島作品の中でこれを挙げちゃうような女は何もわかっちゃいない)

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急に死にたくなった。

だから命売ります広告。

 

ビールをとってくると女は銃を構えている。

吸血鬼の30がらみの女と床を共にする

 

 

>>あの「春の雪」の作者が、現代的な女性の容姿を形容すると....

これは素晴らしい女でね。おっぱいがこういう風に両側へ、仲のわるい二羽の鳩のようにソッポをむき向き合っておる。あの体のすばらしさは何とも言えない。足がまたいい。神経質に細すぎる病的な足がはやりのようだが、彼女の足は、豊かな腿からかすかにかすかに足首のほうへ細まってゆく具合が何ともいえない。尻の恰好も、もぐらがもちあげた春の土のような、ふくよかないい形だ。

 

 

「ヘンね。それなら当てずっぽうでドアのベルを押して、お誂え向きに、ここに私みたいなグラマー美人がいたってわけ?」

「はあ、そんなところでしょう」

「海のいい人ね。おつまみがないわね。朝っぱらから、ビールでポテトチップスっていうのも変かしら?ああ、チーズがあった筈だ。」

彼女が忙しくまた冷蔵庫をあけに行った。

「あら、よく冷えてるわ」

という声がした。

そして皿にサラダ菜を敷いて、何か黒っぽいものをのせて来た。

「これをお上がり」

とうしろへ来たのがヘンだった。

すると、羽仁男のほほにピッタリ冷たいものがうしろからくっつけられた。横目で見下ろすとピストルだった。彼は別におどろきもしなかった。

「ねえよく冷えているでしょう」

「そうですね。いつも冷蔵庫へ入れておくんですか」

「ええ、私、あったかい凶器なんてキライだから」

 

 

「今晩ひま?」ときいていた。

何か硝子質のやせた娘で、昼間から夜のお化粧をし、一生笑わないと力んだような唇をしていた。

「まだ昼間よ」

「だから、今晩ひま、ってきいてるんだ」

「昼間から今夜のことなんかまだわからないわ」

 

 

「おやじが死んでから、可哀想に、おふくろは性的不満でね。はじめは僕に遠慮していたみたいだけど、そのうち、絶対にガマンできなくなったんだね」

「よくあることさ」

と羽仁男は多少退屈を催しながら、相槌を打った。

この学生服の坊やは、多少人生を誇張して考えているのにちがいない。頭の中でへんな安っぽいドラマを組み立て、自分は今こそ人生の秘密を知ったと思い込む年頃だ。それにしては一面いやに老成したところもあるが、このごろの少年にはよくこんな、のびすぎた土筆みたいな無味乾燥な味があるものだ。

 

 

 

「おいしかったわ、ありがとう。今夜はこのくらいにしておくわ」

と、スタンドの灯りの下に、接吻を求めて近づいて来た女の唇には、血が乱れていた。

 

 

ーそれから羽仁男はこの家にずっと住みつくようになった。

毎夜毎夜血を吸われ、次第に危険な場所が傷つけられ、静脈がひらかれ、吸われる血の量も増した。

 

 

 

あの田舎くさい黄色っぽい赤、あの匂い、殊に生と来ちゃゾッとします。

子どものころ、大嫌いなオヤジが生にんじんんをポリポリ喰べてるのを見て、あんなことをしていたら今に馬になってしまう、俺だけは一生決してあんな下品な物は食べない、と子供心に思ったことが、いつか生理的嫌悪にまでなったのでしょう。

 

 

俺はとうとう警察署の玄関から外へ突き出された。

たった一人だった。

 

 

 

 誰もこういう小説に 魂の告白 を期待していないのである。

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