『晩春』
1949年、松竹。監督 小津安二郎。
戦後間もなく。戦争の物故あってか、娘(のりちゃん:原節子)がまだいってない。
「あたしがいなくなるとお父さんが困るわっ」ってそういう話。「孝行娘がまだいってない、いかせたい、本人に聞いてみる」みたいなのって、きわめて小津的な主題であり、このテーマは他の作品にも数多く見られる。
のりちゃん「おじさま、なんだか不潔よ。汚らしいわ」
おじさま 「そうかい。不潔かい。そりゃ、困ったな。不潔かあ」
ほーんと鎌倉の何もないところサイクリングするシーンが好き。
父親(笠智衆)は、大体「そうかあー」「そうかね」「そうかのお」のオウム返しの相槌。 個人の葛藤や意見の表明をそれらの演技からは消している。
あたし、このままお父さんといたい。お父さんとこうしてることが私の一番の幸せなの。
→いまの娘だったらこの感覚少し考えにくい(いや、そうでもないのか??)。こんなこといってるようだと、やっぱり少し心配になる。
(三つ指ついて、礼を言う娘に対して)
父(笠智衆)「幸せに。いい奥さんになるんだよ」
ラストシーン、モーニングを来た父親はひとり帰宅して部屋に入る。
籐椅子に腰を下ろし、りんごの皮をむく。
ゆっくりと回したりんごから皮が落ちると、そのまま頭をうながれるように落とした。そのとき父は一人になったことを実感したのだ。