『奇跡を起こす』立川吉笑氏(8月10日付 朝日新聞)』
ほんとに朝日新聞のオピニオン面は、ときに、テーマと人選が絶妙で、実に頼もしく思う。
立川吉笑氏が出てたのでしっかり読む。
談笑の弟子、川田十夢さんの押しで注目するようになった。
彼の落語には、談志タームである"伝統を現代に"、"イリュージョン"、"エス"などの手触りがある。つまり、落語の底流にある本質的なものに触れている感じがするのだ。
今後もフォローしていきたい若手落語家だ。
で、奇跡について。
古典落語「だくだく」を前振りにして、
視野をどんどん広げていくと、日常をいわば思い込みの結晶、その奇跡みたいなバランスで成り立っている気がする。
だとすれば、思い込み次第で、ままならない日常もたちまち楽しくしのげるんじゃないか。楽しい瞬間なんかいくらでもでっちあげられるんじゃないか。
そう言えば以前、彼女とのデートで、「今日は街でキリンを探そう」と提案したことがありました。すると、店頭の看板には意味なくキリンが描かれていたり、通り過ぎる人が偶然キリン柄のTシャツを着ていたり。それらを見つけるたびに「奇跡だ!」と2人で幸せを感じることができました。イタいカップルのそれなんですが、でも確かに幸せを実感できるんです。
そこに存在するだけだと何の価値もないはずのキリンも、思い込みをうまく利用したら、たちまち奇跡を起こす道具に変えることができる。
思い込みを使いこなす僕はいつも幸せです。だって今日も素晴らしい話ができたつもりだし、これでお客様がドッと増えるつもりだし、編集長が破格のギャラを払ってくださるつもりだし。それがたとえかりそめの幸せだとしても、ないよりいいと思うのです。
こりゃ、吉笑版「だくだく」のサゲやな。