ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

『ゴーンガール』

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2014年。監督:デビット・フィンチャー 原作:ギリアム・フリン

ベン・アフレック。オザムンド・パイク。

 

一回目は劇場で、二回目ネットフリックスで。

ストーリーの骨子だけ見つめると、なんてことはないただの“結婚生活の終焉と破局模様”でしかないのだが、それがありきたりの泥仕合にならない。

妻は綿密な復讐を遂行し、夫は策謀の網から逃れる、そんなスリリングな展開になっている。

 

 

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二人の出会いは印象的だ。

ニックがアプローチする会話は知的でセンスが良く、気が利いていて適度なバカさもある。あまりにナイスな男に映る。

「当てよう。君のタイプは・・

 プルーストについて語るようなタイプの男はダメだな。

 あいつかな。何事も笑い飛ばすタイプ」

「わざとらしくない人が好き」

 

 

プロポーズもひと際象徴的だ(このエピソードとて、エイミーの創作日記なのかもしれないのだが・・)。

 母親の出版記念パーティ。『アメージングエイミー』のモデルは娘のエイミーだ。

記者やブロガー達の「結婚について」の質問に答えるエイミー。

輪の中に入ったニックは

 「すみません僕からも質問が。記者として質問がしたい」

「ニック・ダンと付き合ってどのくらい?」

「夢のような二年」

「ニックの老いた母親が歌うたびに喜んでくれた ニューヨーク ニューヨーク」

「君は彼に初めてのハサミを贈った」

「ホッチキスも」

「エイミー 君はアメージング(完璧以上)だ」

「頭がいいのに気取り屋じゃなくて」

「僕を刺激し驚かせてくれー」

「読者にとっても興味深い」

「君のアソコは世界一」

 一同(笑)

「君はまだ結婚してないとか? 事実かい?」

「未婚よ」

「潮時だな」

 

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中華料理屋で店員が持ってきた白い箱。

開けると最高級のベッドシーツ。

 ニックも自分のバッグから同じシーツを取り出す。

「わたしたちって、サイコー!(殴りたいほどステキ)」

「同じものを買うとはな」

 

 

 出会いから結婚当初までの二人の気持ちの重なり方、燃え上がり方は無論その後の冷えきった夫婦関係を予兆する。誰しもが、幸せの絶頂期にあるときには不安を憶えるものだ。その幸福感は遅かれ早かれ失われるものだ。そして幸福の火が強ければ強いほど、それが失われたときの喪失感や空虚も強く感じられるのだ。

 

 

 

やがて、出版不況でニックがクビに。

家でゴロゴロしてゲームをするようになる。

文句ばっかり言って夫を支配するような妻

 

夕べは絶望を通り越して、なりたくない女になってる。 

 

私はとうとう気付いてしまった。私は夫を恐れている。 

 

 

以後は、妻が仕掛けたいくつかの罠。

キッチンのルミノール反応

近所の友だちに刷り込んだ友人交誼

引き上げられた生命保険の掛け金

創作された日記記録

 

独白は(よって、ハイライトかつパンチラインは)常に妻の側にある。

 

 

この子が結婚を救ってくれるだろうか

 

ニックの目が気になる

私を見るときのあの目

 これは、少なからぬ、伴侶や恋人を持つ誰もが感じることではないだろうか。

 

自らの眠りからふと目を覚ましたときに、傍らに寝る相手が見つめていたとき。

何気なくテレビを見ているときの自らの背中に、投げかけられた視線は一体何を見ようとしているのか。彼女は僕を見て、一体何を考えていたんだろうか。

 

一言で、しかも無邪気にこの映画の本質を言ってしまおう。それはつまり、

夫婦は一緒に暮らしていても、何を考えているのか分からないっ!

ということなのだ

 

何も知らない夫が仕事に出掛けるのを待つ

浪費、虐待、恐怖、暴力による危険。

私だって物書きよ

 

 

誰もが当たり前に感じている難しさ。

難しいのに足を踏み入れてしまう魅惑の契約。

そうゆうものを舞台にして、特殊や異常を扱えばその当たり前のものの深い考察や奥行きが抱き得るのではないだろうか。