『17歳のカルテ』
99年。原作はスザンナ・ケイセンの自伝『思春期病棟の少女達』。
ウィナノ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー。
レンタルビデオ屋ではしばしば目についたジャケットが、なかなか手に取る機会を失っていた(なぜだろう、女二人の話だろうとタカくくったからかな)。
自身も境界性パーソナリティ障害で精神科入院歴があるウィナノ・ライダーが権利を買い取って製作総指揮したという力の入れよう。
その一方で、リサを演じてアカデミー助演女優賞、ゴールデングローブ賞助演女優賞、全米映画批評家協会賞新人賞と総なめにしたアンジーに嫉妬するような発言もあったとか。要は食ってたんだな。アンジーが主役を。
(恋人、つうか寝ただけの男?のトビーが)
徴兵委員会が俺の誕生日を引き当てれば、俺はもう終わりさ。
全体、リサが病院内のリーダーかつトリックスターとして躍動する。
7〜8人で病棟を抜け出して、ボーリングとか心療医の執務室に行ったり夜の遊び。
外出して、雪の日にアイスクリームパーラーに行ったときにかち合わせた教授夫人(スザンナが夫を寝取った夫人)が絡んできたとき、噛み付いたのがリサ。
まだ来でねえ〜。教授夫人〜。
とにかく破天荒で加減を知らないリサに対して、
スザンナは友情とか信頼みたいなものを獲得したのは間違いない。
この病棟で、あなたはまとも。
あなたはただの怠け者のわがままよ。
自分を壊したがっている子供よ。
(リサは、退院したチキン屋の娘のデイジー(ブリタニー・マーフィー)が父親と近親姦であること見破る)
あんたがパパにやられてんの、みんな知ってんだからねーっ
ここにずっといちゃダメよ。わかる?
物語の終盤。
スザンナは書くことに没頭した。
最後の夜、目を開けると誰もいない。
リサが地下で日記を朗読していた。スザンナの日記だ。
そこには冷静な観察者としてのスザンナが、病棟の患者(友だち)のことを記録していた(それは、仲間うちだけに見せる彼女たちの素直な部分と、観察者としての冷静な視点とを織り交ぜたもので、密告に近い雰囲気だ)。
つまり、「まともな人間が精神病棟に入ったら」という物語のアプローチだ。
観察者としてのまともな人間を演じたライダーが、トリックスターとして躍動したリサを演じたアンジーに、勝てるはずがない。