『分断の行方(2017年1月21日付朝日新聞朝刊)』
水島治郎さん 千葉大学教授
既成政治かポピュリズムか、右か左かという2本の軸で分けると、「既成で左」がクリントン氏、「既成で右」がジェフ・ブッシュ氏ら共和党主流派、「ポピュリズムで左」がサンダース氏、「ポピュリズムで右」がトランプ氏を支持したとえいます。中南米は「ポピュリズムで右」が弱く、欧州では「ポピュリズムで左」が弱いが、米国は四つがそろっている。
トランプ氏の主張は右派に響く「移民たたき」に加え、ポピュリズム的な「既得権益層批判」も主張に加えることです。
福音派は米国民の4分の1ほどを占め、聖書に書かれていることをそのまま信じます。
移民の国の米国には、国の長い歴史や「共通する過去」がありません。代わりに、宗教的な価値をベースに「神の前では人は平等で、機会が等しく与えられ、努力すれば成功できる」という「共通の未来」をアメリカン・ドリームとして共有してきました。
共通の未来を託せる人物がいないことを理由に投票を棄権するのは、米国民としてのアイデンティティを自ら否定する行為です。
どうあっても選ぶしかない。ならばと、人工中絶否定といった「いいところ」を見つけてトランプ氏に迎合したのです。