『死んでしまう系のぼくらに(最果タヒ)』
思春期に読んだらやばい系だったわー
30過ぎても、ぐっとくる言葉たち。
詩の批評ってほんとに難しい(もちろん短歌よりも)。
共通理解や前提が少ないからだろうか。
個々が描いた風景について、おそるおそる語るしかないのだ。
意識される、死と他人の目。
キラリと光る、数行が、この詩人の歌集にはあった。
大切なものが死んだあとの大地はすこし甘い匂いがする
ベランダにあったはずの蝉の死骸がなくなっていて
生き返ったのかなとご飯を食べながら平然と思う
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(線香の詩)
私達のこのセンチメンタルな痛みが、疼きが、
どうかただの性欲だなんて呼ばれませんように。
昔、本で読んだ憂鬱という文字で、かたどられますように。
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(文庫の詩)
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だれでもいいような世界にでていくのだから、だれでもいいような気持ちで愛を語ってごらんって。名言だ。大好き。
きみは別の子と手をつないで楽しそうだね。思う
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愛について語れるぐらい、最低になりたいな。
寿命で死ぬのはブスって、きみに言われて生きたい。
(渋谷)
女の子の気持ちを代弁する音楽だなんて全部、死んでほしい。
いろとりどりの花が、腐って香水になっていく。
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愛について語れるぐらい、最低になりたいな。
死ぬな、生きろ、都合のいい愛という言葉を使い果たせ。
(香水の詩)
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女の子を侮辱しよう。
おまえらは悪魔だと侮辱しよう。
いつか泥まみれになって、泥を産んでそれをひっしで人間にしようと、あがくんだろう。と笑おう。
(骨の窪地)
君は犬みたいに信じて待つけれど
好きだった音楽をきいて心が爆発しなくなったら、
私の思春期はつまらない生命維持装置の心臓に
殺されたってことだろう。
恋のような苛立ちや焦りが、結局は性欲だったこと、
ただの大音量に本能で反応していたこと。知っていたよ。
私のスカートの下には肌がある。それは猫や犬と同じよ。
(スピーカーの詩)
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愛してほしいというのは暴力だ、だから抱きしめたいと言ってみる。欲情でかたったほうがむしろ、信じられるって、言っていたのはどこの誰だっけ。だれも好きにならないで、そのまま結婚して子どもを産んで、死ぬ人生は、おだやかで幸福感に満ちていた。
(教室)
言葉も、情報を伝える為だけに存在するわけじゃない。
意味の為だけに存在する言葉は、ときどき暴力的に私達と意味付けする。その人だけのもやもやとした感情に、名前をつけること、それは、他人が決めてきた枠に無理矢理自分の感情をおしこめることで、その人だけのとげとげした部分は切り落とされ、皆が知っている「孤独」だとか「好き」だとかそういう簡単な気持ちに言い換えられる。
けれど、それは本当に、その名前のとおりの気持ちだったんだろうか。いつのまにか忘れてしまう。恋なんて言葉がなくても、私はそれを恋だと思っただろうか?
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言葉が想像以上に自由で、そして不自由なひとのためにあることを、伝えたかった。私の言葉なんて、知らなくていいから、あなたの言葉があなたの中にあることを、知ってほしかった。
それで一緒に話したかったんです。
そんなかんじです。またいつか、お会いできたら嬉しいです。
ありがとう。
(あとがき)