「平成流の象徴天皇」(2019年3月7日付 朝日新聞)
山口輝臣 氏・東京大学准教授
(憲法の政教分離を厳格に適用しようという人たちが、左派の間に出てきます。天皇が神道にかかわるのはけしからんという感覚の人も増えました)
政府や宮内庁は、天皇の宗教的な行事はあくまで私的なもので、公費ではなく内庭費でまかなえば法的に問題はないという立場をとりました。
かつて起こした侵略戦争や植民地支配への「謝罪」を表明する必要が出てきた。そこで、直接の戦争責任を持たない現天皇を政治利用しようとしたわけです。92年の訪中を筆頭に、東南アジア諸国、欧州、米国などへの旺盛な訪問がそれです。
加えて、天皇自身野行動も政治的な積極性を強めます。95年の全国戦没者追悼式での「おことば」で平和について触れたことがその画期です。慰霊の旅も始まりました。
安倍政権の6年間に顕著になったように、政治が改憲や軍事化の方向に突き進もうとしているとき、天皇が「歯止め」として期待されるようになった。
もし安倍政権の政治を変えたいのであれば、国民が選挙を通じて変えるべきです。
なぜ日本国憲法が天皇に一切の政治的行為を禁じたのかを、改めて考えてみることではないでしょうか。