「リベラル派が陥る独善(政治学者・岡田憲治)」2021年9月9日付朝日新聞
似非保守セクトが長らく政権運営をしているこの国では、リベラル派は不正を糾弾し、怒り、反対するシーンばかり演出させられて、常に劣勢を強いられている。
そんな政治環境のなかで、リベラル派や野党はどう闘っていくべきか。本記事では、その点で重要な視点を提示している。
―前回衆院選で、自民・公明両党の得票集計は選挙区も比例区も50%に届かず、野党候補が競合した220余りの選挙区のうち、その得票計が与党候補を上回った選挙区は60以上ありました。
「つまり、小学生にもわかる必勝法があるのに、ゲームの仕組みを無視してバラバラに戦い、与党候補に議席をプレゼントしてきたわけです。」
「過半数を取れないまでも、伯仲国会を実現できれば、常任委員会の委員長ポストをかなり獲得できます。審議拒否により定足数を不足させ委員会を開かせないという戦術も使えますが、いまは交渉すらできない。
「リベラル野党が『上顧客』と考えている一部のラジカルなフェミニストを忖度してのことでしょうが、新たに開拓すべき潜在的顧客を失うことになると思います」
ーもっと現実的な政策を打ち出すべきだ、ということですか。
「訴える政策の順番付けが間違っているということです。ジェンダー平等や性的少数者の権利、原発、動物愛護はもちろん大切ですよ。でもそれが響く人は、最初から野党に投票しています。いま政治が示すべきは、当然ながら、人々の生活を守るという強い意志です。いまや日本は年収300万円以下の給与所得者が4割を占め、非正規雇用の労働者も4割に及んでいる。特に女性若年層の貧困は、報知を許さないレベルです」
ーですが、「顧客」を見誤っているという点は保守も同じでは。
「リベラルも保守も、極端な固定客をつなぎ留めようとしている。その結果、中庸な人々の政治的期待は行き場を失っています」