『芥川賞の謎を解く(全選評完全読破):鵜飼哲夫』
鵜飼さんの新書。
150回以上にわたる芥川賞の選評。それは日本人の文学的創造力の歴史である。
芥川賞とは、文学とは何か、という問いに対する暫定的な答えである。
自分が生まれる前の作品や、当時世間を騒がせた(その時代の人間に何かに触った)作品の数多を、とにかく読んでみたくなった。
・賞を欲しがり、川端に泣訴求した太宰。
・印象派=ただ印象を描いただけではないか、という悪評から生まれた
・安部公房について、ある朝、目を覚ますと、突然自分の名前を喪失してしまい、「無」に近い存在となる青年の孤独な実存体験を描く小説『壁』
・おのれのうちの気分の高揚も信じないこと。おのれが優等生でなく、おのれの自我が平凡であり卑小であることを認めること
・若者に必要なものは?「若者でバカ者でよそ者」
川上二郎
「極限すれば、傑作が一遍出現したとき、すべての一般論、状況論は無力化する運命にある」
慎太郎氏は70歳手前の会見で、「あの人、まだ生きてたのか?」といわれながら生きるよりは、『あいつ早く死なないかな』と若い人から憎まれ口を叩かれる存在になりたいね。顰蹙を買うことを恐れない。
「新しい文学」というのは、容易に説明できるものならば、もはやそれは「新しい文学」ではないという背理がある