ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

「私をくいとめて(2020・のん)」

 

2020年10月。綿矢りさ原作、大九明子監督、主演にのん(能年玲奈)、林遣都、臼田あさみ。

 

自分の中の「A」と対話しながらつつましく一人暮らしする、みつ子。

 「A」の声は中村倫也なので、Aとの会話は自分の中での脳内会話なのに、一人暮らしをする女性と、その女性以上に自らを理解している風なイケメン声(中村倫也)との会話は、映画を見ている側にはまた別の叙情を生む。彼女は一人だけど楽しそう。でも他人から見たらちょっと”イッちゃってる人”。

そう、部屋の中で、一人の休日、いわゆるおひとりさまライフを過ごしている間、あたかも別人格との対話しているように物語が進むのだ。

これは、小説の中での作用(と効果)とも違う、映画ならではの仕掛けですよね。

原作である小説とはまた違った感興がある。

 

淡々と、生活の中でのひとりごちや吐露を展開しているうちに、

苦い記憶や頭の片隅に追いやっていた黒い情念や憎しみの言葉が出てくるシーンにはドキリとする。しかもそれを、のん が吐くのだ。そのギャップ恐ろし面白し。

 

「あの先輩すごいね!わたしのクソ芝居見抜いてたってことだもんね!」

 

 

「大丈夫?って聞いてくれるのぞみさんがいてくれたから、息ができた」

 

 

会社の先輩で、唯一心を許せる話し相手・のぞみさん(臼田あさみ)との会話は楽しい。女の子同士のこんな会話覗き見るのは楽しいし、ホッとする。

 

「なんかこれワインの気がしてきた。効く〜」

「タピオカミルクティーですよ」

 

「バレンタインに東京タワーの階段を登るイベントあるの知ってる?」

「知りません。なんですかそのクソイベント」

 

 

会社によく来る取引先の営業で年下の男の子(林遣都)といい感じになった時(その一方で不安と恐怖に陥った時)。ホテルのフロアにある製氷機に氷を取りに行った廊下の片隅での壮絶な演技なんかは、まるで舞台観に行って最前列でのんの演技みせれてるくらい惹きつけれて、見応えあった。

 

 

「一人で孤独に耐えてる頃の方がよっぽど楽だったー!」

 

わたしこのまま一人でとめどなくしゃべり続けて、一人で死んでいくんだ!

 

 

「誰かわたしをくいとめてー!!!」

 

 

 

綿谷原作の大九作品、とても良かった。
またこのタッグ映画を観たくなった。