ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

2016-01-01から1年間の記事一覧

『ナニワ金融道 8巻』

名作回との呼び声高い単行本8巻は、 舶来物タイヤを用いたマルチ商法。 府警のダメ刑事 浴田山海。 若きマルチ商法の総代理店 枷木。 社歴と経験を積み、こ慣れてきた灰原に対して協調する(したかに見える)パートナーが現れたときストーリーは躍動してい…

『17歳のカルテ』

99年。原作はスザンナ・ケイセンの自伝『思春期病棟の少女達』。 ウィナノ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー。 レンタルビデオ屋ではしばしば目についたジャケットが、なかなか手に取る機会を失っていた(なぜだろう、女二人の話だろうとタカくくった…

『インターステラー』

2014年、C・ノーラン監督。 マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ。 小麦は疫病で全滅。トウモロコシも灰砂で覆われてろくに収穫出来ない世界。 インド空軍のドローンを追いかけて、ハッキングコントロールする。 インドもアメリカも空軍がなくなっ…

『科学の発見(スティーブン・ワインバーグ)』

新聞各紙の書評でも話題になっていた。 理論物理学者で、79年のノーベル物理学賞受賞者スティーブン・ワインバーグ(量子論の統一理論第一歩)の著書。 私は現代の基準で過去を裁くという危険な領域に踏み込む。 本書は不遜な歴史書だ。過去の方法や理論を、…

『明日の記憶』

2006年、ちょうど新卒で入社した頃か。原作は荻原浩。 広告代理店(電博ではない)の営業部長氏(渡辺謙)。 この映画の怖さは、アルツハイマーという病気の症状の現れ方を描き出すリアリティにある。ごく普通のことが思い出せない。当たり前のことが出来な…

『パッチギ!』

2004年、井筒和幸監督。 日本では差別され、肩身の狭い思いをしている(朝鮮人)側の、 それでもヘコまされないたくましさとか、健気さとか、力強い魅力を描く。 もはや日本人が失ったかもしれない、男の熱さ。 健気ながらたくましく生きる、美しい女子。 役…

『金融腐食列島 呪縛』

97年。原田眞人監督(「ラストサムライ」「日本の一番長い日」)。 原作 高杉良。 後の半沢直樹シリーズにも継承されうるような、 中年ミドルの金融業界痛快勧善懲悪劇。 朝日中央銀行は日比谷公園の東側にあった。 本店企画部の中年ミドルたちが、銀行ト…

『宇宙を織りなすもの(上) ブライアン・グリーン』

喫煙所でタバコ吸ってたら関連会社の兄ちゃんが、この分厚い本読んでた。 文学ばっかりやってる俺たちも、全然気にならないわけじゃない。 宇宙について。 難しい計算やモデルの解説ぬきで、宇宙や量子について分かりやすくアプローチする。 著者の態度は生…

『宴のあと(三島由紀夫)』

1960年、実在の人物をモデルにした小説とされる。 発表後、訴えられる。 初の「プライバシー権」対「表現の自由」の対決だった。 福沢かづ。雪後庵。野口雄賢。永山元亀。選挙参謀山崎。佐伯首相。奉加帳。 (畔上輝井。般若苑。有田八郎。1959年都知事選。…

『ゴーンガール』

2014年。監督:デビット・フィンチャー 原作:ギリアム・フリン ベン・アフレック。オザムンド・パイク。 一回目は劇場で、二回目ネットフリックスで。 ストーリーの骨子だけ見つめると、なんてことはないただの“結婚生活の終焉と破局模様”でしかないのだが…

『ナニワ金融道 2巻(青木雄二)』

ここだけ憶えてれば話のネタになる! ナニワ金融道名シーン10選! 名シーン① 1)キケン運輸の赤名久吉が帝国金融にトラック購入資金に400万つまみたいと 2)400万円の借金で(金利が1年8ヶ月、560万円)の保証人にのれん分けした23歳の若者 背口くん 3)…

『若者の与党びいき』(9月30日付 朝日新聞)

『記憶あるのは自民ばかり』(平野宏学・習院大学法学部教授) 今年7月の参院選では、朝日新聞の出口調査で、比例区での自民への投票率は18、19歳は40%、20代は43%に達し、20代は他のどの世代よりも高くなりました。 彼らが10代の時に民主党政権…

「女性が奪われていたものは、実は『時間』ではなく『尊厳』だったのではないか」(10月27日付 朝日新聞)

この日のオピニオン面は、実り多いわ〜。 メディア(報道)がいかに、事態を定型的な判断と切り口で考えているか。それを無批判、無思考な人たちが垂れ流してしまうか。これはさきの大統領選でも同じことが言えるね。メディアや報道に携わる者たちでさえも、…

論壇時評『世襲化と格差』小熊英二(10月27日付 朝日新聞)』

政治家が劣化しているという、とTVの中で今日も誰かが言った。 やれやれまた言ってるよという印象の反面で、ほんとにそうだと思う。 私のような、物心ついたころは既に90年代も半ばという世代にとっても、(つまり時の政権が村山富市だったり橋下龍太郎だ…

『体制内で見た文革』王輝氏・天津社会科学院名誉院長(10月20日付 朝日新聞)』

【用語解説】..by朝日新聞 「文化大革命」:経済政策の失敗などを受け、毛沢東が1966年、階級闘争の継続などを呼びかけて発動した政治運動。共産党の官僚化や特権化に対する市民の不満を刺激し、紅衛兵や造反労働者らが組織され、各地で政府機関などが襲撃さ…

『海を感じる時(2014)』

余白が多い日本映画。 土曜朝に読書しながら、視聴する。 パンチな科白のオンパレードだった。 気持ちいいくらい、身体目当ての男。 しかも、シリアスに“女の身体に興味がある”のだと。 女は男に惚れていた。身体で繋ぎ止めるしか、迫るしかない女のギリギリ…

『断影 大杉栄(竹中労)』

ボルシェビキよりも、アナーキズムだ。 (アナボル論争みたいなもんでね」と言ったら、労働者を中央の統制に従う組織にしようとしたボル派と、地方の個々の団体が主体性を保ったまま自由意志で連合すればよいと考えたアナルコ派) こんなに面白いルポは初め…

『ルポライター事始(竹中労)』

序盤の檄文のような「序書き」、太字多しだった。 なんにしろ、書き出しがカッコよかった。 モトシンカカランヌー、・・・という言葉が沖縄にある。 資本(もとで)のいならない商売、娼婦・やくざ・泥棒のことだ。顔をしかめるむきもあるだろうが、売文とい…

『異論のススメ -保守とは何か-(佐伯啓思)』

保守とは、その国の伝統と歴史に対する深い理解と教養に立脚した態度であると過程するならば、安倍首相の教養のなさと思慮の浅薄さは「保守」なるものと相容れないと言えるだろう。 また、アメリカという伝統のない歴史の浅い国で保守を語るとき、それはどう…

『プラットフォーム(M・ウェルベック)』

性的な充足をセックス産業から得ていた僕。 旅行会社でキャリアアップを重ねていた恋人との性的耽溺。 セックス観光のある企画によって、かれらは絶望的な夜に遭遇することになった。 僕は礼儀正しく、真面目で、上司からも同僚からも評価されている。しかし…

『竹中労(KAWADE MOOK)』

#トップ屋 竹中 この世の中に面をさらしたい、有名になりたい、ゼニは稼ぎたい、自分の生活は隠しておきたいなんてムシのいい話はないでしょう。 SEXとは見るものではなく、行うことであったから。ゆえに人々は健康だった。性を抑圧されてノイローゼにな…

『微笑(小島信夫)』

戦地から復員してはじめて、四歳になった息子と出会った。 僕がはじめてじぶんの息子にめぐりあったのは四年ぶりで戦地から復員した時で、僕は自分の息子であるというより、何か病気の息子であるようなかんじにおそわれた。 僕はそうしながら、痺れるような…

西野カナの「トリセツ」のMVがキモい。歌詞世界を映像化するプロセスでどう失敗するのか。

晴れた日曜日の午前中にMTVを視ていて、ふと思った。 「いや、西野カナの『トリセツ』のMV、キモい。」 今更な感もあるけど(発表当初にも話題になったのかな?)。 このMVを目にして、ざらっとした何かが残った。違和感?既視感?嫌悪感?この気持ち…

『濹東綺譚(永井荷風)』

荷風荷風っと、日々の記録である断腸亭日乗よりもこちらっの方がこの人のしょーもなさが感じ取れる(私は永井荷風のことを面白い人だとは思うが、昨今の巷の評価のように“粋”だ“洒脱”な江戸人だと云って、いたづらには称揚したくはない)。 あと、木村荘八の…

『憂国(三島由紀夫)』

心中、それが一番美しいと三島は云った。 おそらく現代人には分からない感覚だろう。 「死んではダメだ。自死は罪深い、ましてや誰かを巻き添えに死ぬなんて愚かだ」まっとうな現代人はそう言うだろう。 しかし、それは平和な時代を生きているわたしたちの標…

『ここらで広告コピーの本当の話をします。(小霜和也)』

小霜本の2作目。 アドマンとしては、ほんっとに丸暗記しておかなきゃいけない(しておくと使える)話が盛りだくさんであるにも関わらず多くのアドマンがここで読んだ内容を覚えていないんだぜ。そういうもんなんだよ、アドマンなんて。 立ち止まって、記憶…

『芸能人寛容論 -テレビのわだかまり-(武田砂鉄)』

武田砂鉄 新刊。 この人の着眼点と連想はあまりに巧みで魅惑的だ。 観察と洞察に富み、ミクロとマクロを運動する。 その批評は、癖になるほど甘い。 「やっぱりEXILEと向き合えないアナタへ」 ・強面のお兄さんたちなのだが、暴力の匂いがしない ・ざっ…

『ミシマの警告 〜保守を偽装するB層の害毒〜』適菜収

冒頭、一行目。 結論から言うと、もうダメでしょうね。日本は。 完全に腐ってる。 はー、一行目から適菜節全快です。 問題意識は以下の2点。 ・「保守」が急速に劣化した。 ・メディアが用意した「正論」にしがみつく思考停止した人たち(B層)。 まずきち…

『ブラックホークダウン』

92年、ソマリア。 30万人が餓死、国連による食料や物資が市民に渡らない。 激化する部族闘争は"飢餓"を武器にした(10万人の民間人が餓死)。 現地で最強部族を率いるアイディード将軍はPKOに宣戦布告。 米国は精鋭デルタフォースと陸軍レンジャー部…

『アメリカン ヒストリーX』

98年。カリフォルニアのベニス・ビーチ。 これもまた、一見するとタイトルが映画の内容を上手に想起させてくれないタイプの映画。 とはいえ、原題も 『AMERICAN HISTORY X』なのでやむ方なしか。むしろ、そのタイトリングの発想や意図に追いつかなければな…