ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

「福岡伸一の動的平衡 ーウイルスという存在ー」(2020年4月3日 朝日新聞)

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生命を、絶えず自らを壊しつつ、常に作り替えて、あやうい一回性のバランスの上にたつ動的なシステムである =動的平衡の生命観

 

 

ウイルス表面のタンパク質と宿主タンパク質とにはもともと友達関係があったとも解釈できる。さらに細胞膜に存在する宿主のタンパク質分解酵素が、ウイルスタンパク質に近づいてきて、これを特別な位置で切断する。するとその断端が指先のようにするすると伸びて、ウイルスの殻と宿主の細胞膜とを巧みにたぐりよせて融合させ、ウイルスの内部の遺伝物質を細胞内に注入する。

 かくしてウイルスは宿主の細胞内に感染するわけだが、それは宿主側が極めて積極的に、ウイルスを招き入れているとさえいえる挙動をした結果である。

 

ウイルスは、ーーー高等生物の一部が、外部に飛び出したものとして。ウイルスはもともと私たちのものだった。それが家出し、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れているのだ。

 なぜそんなことをするのか。それはおそらくウイルスこそが進化を加速してくれるからだ。親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。しかしウイルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達しうる

それゆえウイルスという存在が進化のプロセスで温存されたのだ。

 

その運動はときに宿主に病気をもたらし、死をもたらすこともありうる。しかし、それにもまして遺伝情報の水平移動は生命系全体の利他的なツールとして、情報の交換と包摂に役だっていった。

 

私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共に動的平衡を生きていくしかない。

 

 

Wikipediaより

動的平衡(どうてきへいこう、dynamic equilibrium)とは、物理学化学などにおいて、互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、全体としては時間変化せず平衡に達している状態を言う。

 系と外界とはやはり平衡状態にあるか、または完全に隔離されている(孤立系)かである。 なお、ミクロに見ると常に変化しているがマクロに見ると変化しない状態である、という言い方もできる。これにより他の分野でも動的平衡という言葉が拡大解釈されて使われるが、意味は正確には異なる。