コロナ後の男と女「日本で家族解体がなぜ進むのか」(週刊文春 2020年7月2日号)
週刊文春のコラム、執筆は「女と男 なぜわかりあえないのか」の著者で元編集者・作家の橘玲(たちばな・あきら)氏。
日本は「近代のふりをした全近代的な身分制社会」だと考えていますが、もうひとつきわだった特徴は、「世界でもっとも世俗的な民族」だということです。
世界価値観調査で「人生の目標」について訊くと、中国や韓国はもちろん、アメリカの若者ですら「家族の期待にこたえる(親が誇りに思えるように努める)」との回答が一定数ありますが、日本の若者は「他人に迎合するよりも、自分らしくありたい」「自分の人生の目標は自分で決める」が圧倒的です。常識とは異なって、日本人はきわめて「個人主義的」なのです。
1990年代はじめに、香港で知り合った若者から「日本人は一人暮らしをしてるってほんとう?」と訊かれたときです。「そんなことして怖くないの?」と真顔で言われました。90年代の香港ですら、結婚して自分の家族をつくるまでは親といっしょに暮らすのが当たり前で〜
日本人はあまり気づいていませんが、ワンルームマンションは欧米にはほとんどありません。大学の寮は二人一部屋だし、〜
日本人はどういうわけか、「一人」を孤独とは思いません。
村上春樹がアジアで熱烈に読まれる理由のひとつは、一人暮らしの魅力を描いているからでしょう。
→この視点はなかった。たしかに、春樹作品中の「僕」は一人で生活するのが、楽しそうで。
そんな日本では家庭のなかに複数の「世帯」ができてしまいます。結婚して子どもが生まれる、夫は「会社」という共同体に属して、「二世帯同居」になります。単身赴任というのは欧米では考えられませんが、日本ではなんの問題もなく受け入れられるのは、もともと世帯が分離されているからです。子どもが中学生くらいになれば、父、母、子の「三世帯同居」で、食事の時間も別々になります。