「委縮するメディア(斉加尚代さん・毎日放送ディレクター)」
上映中のドキュメンタリー映画「教育と愛国」で監督を務める毎日放送(MBS)のディレクター。
2010年に大阪維新の会ができて以降、政治主導の教育改革が進みました。その変化が速いなと感じていたところ、国が道徳を教科化することになった。
そして戦後初めて作られた小学校の道徳の教科書で、『パン屋』を『和菓子屋』に書き換える、ということが起きました。
12年に大阪府立高校の卒業式で教職員が国歌斉唱しているか口元チェックをされたことがあり、当時の橋本大阪市長へ会見で『一律に歌わせるのはどうが』と尋ねました。当然の質問をしたつもりでしたが、約30分にわたる言い合いになってしまいました
昨年、私は局内全員メールを送り、良心に基づく『個』の視点を持つのが大事だ、と書きました。
―メディアは委縮してしまったのでしょうか。
「委縮しそうな状況が生まれたら、逆にはね返さなきゃいけない。それがメディアの役割です」
政治家が『表現の自由』を言い出した時点で、私は世の中がおかしくなったと思いました。表現の自由が必要なのは、意見をたたかれたり黙らされたりする人たちです。なのに政治やSNSを前に、今はメディが自ら縮こまっています。