『内なる天皇制』森達也@2013年11月27日付 朝日新聞
久々に耳にした「不敬」は、私たちは変わったというよりは、天皇についてただ考えなく、語らなくなっているだけなのだと教えてくれる。
騒動後に社会とメディアにあふれた言葉は『政治利用』だけでなく、『非礼』や『失礼』、そして『不敬』でした。この国の『内なる天皇制』はこれほどに強固だったのかと感じ入りました。
「そもそも人間は象徴にはなり得ません。ひとりひとり個性があるからです。表情や発言に感情がにじんでしまうことがある。寿命があるから代替わりもする。象徴天皇制はどんなキャラクターの人が天皇になるかによって相貌が変わる、実はとても不安定な制度です」
この国の近代化の原動力の一つは、他のアジア諸国への蔑視であり優越感で、敗戦後もその感情は持続しました。
日本は今後間違いなく、ダウンサイズの時代に入ります。でも、認めたくないんですよ。アジアの中のワン・オブ・ゼムになってしまうことを。
僕たちは天皇制とどう向き合うべきか、きちんとした答えを出せていない。山本(太郎)さんの軽率な行動は図らずも、このことを明らかにしてくれました。