ここがパンチライン!(本とか映画、時々 新聞)

いま、物語で大事なのはあらすじではない。そこで語られている言葉とリアリティだっ!!ということで、卑怯で弱い人間を愛したい。人間の野蛮さ、愚劣さから目を背けたりしたくない。おのれ自身の端緒(根っこ)が絶えず更新されてゆくそんな経験をする、そのための記録。大江健三郎と吉田修一と。三島と太宰と。村上春樹と中村文則、小島信夫と舞城王太郎。カズオイシグロにミシェル・ウェルベック。カーヴァーとチャンドラー、ブコウスキーにキューブリック。コッポラにデビット・フィンチャー。ウディ・アレンもケヴィンスペイシーも。談志だって

『もものかんづめ(さくらももこ)』

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ちびまる子ちゃんの作者、さくらももこのエッセイのセンス。ワーディングの絶妙さ。視線のシニカルさやユニークな文章には定評がある。

 

 

「健康食品三昧」

ケーキ屋の試食品をばくばく食べている女がいる。それが正午の人であった。

 彼女は花柄のブラウスにパンタロン超センスの悪い60年代のいでたちで、汚いきんちゃくを持っていた。ケーキ屋の試食品を食べた後、私の方を見てニヤリと笑い、「健康食品には用はないよ」と言い放って立ち去った。

 

 

 

「明け方のつぶやき」

それのCMに出ている役者までをも信頼し、「あんたがそう言うのなら、あんたを見込んで買いましょう」と、財布のひものブカブカになる。アクアチェックをしていた頃の石坂浩二など、何度私に見込まれたであろう。 

 

私と父は機関銃のように笑った。バージンボイスを「うんこちんちん」に奪われた枕(=睡眠学習枕)は、少し震えているように見えた。

 

 

「メルヘン翁」

私は姉の期待をますます高める効果を狙い、「いい?ジイさんの死に顔は、それは面白いよ。口をパカッと開けちゃってさ、ムンクの叫びだよあれは。でもね、決して笑っちゃダメだよ、なんつったって死んだんだからね、どんなに可笑しくても笑っちゃダメ」としつこく忠告した。

  姉は恐る恐る祖父の部屋のドアを開け、祖父の顔をチラリと見るなり転がるようにして台所の隅でうずくまり、コオロギのように笑い始めた

 

”泣き女”とは、東アジアあたりのどこかの国で、葬式があると悲しみのムードを盛り上げるために、わざわざ泣きにやってくる女のことである。

 

霊柩車に棺が入れられると、「ジイさんも偉くなっちまったなア、やいやい」と父が呟いた。ちなみに「やいやい」という無意味なかけ声は、たいした発言でもないのに少し注目してほしい時に発する父独特のくだらない口ぐせである。

 

 

 

「無意味な合宿」

 私は”シイタケのみじん切りに、足や触覚があるはずはない”と思ったのだが、誰も何も言わずに食べているので”私だけムシがいると騒いで神経質な女だと思われたらイヤだからやめよう・・・”とつまらない見栄をはり、コクゾウムシをシイタケのみじん切りだと自分を騙しながら我武者羅に食べた。 

 

 

「宴会用の女」

この男をこの先”先輩”と呼び、慕わなければならないのかと思うと、労働意欲が蒸発していく気がしたが、一応「どうぞよろしくお願いします」とあいさつした。 

 

 

「意図のない話」

しかし、彼女の話が事実ならば、彼女の大腸内で五十センチもの便が、ブレスなしで保管されていたのは驚異である。

 

 

 

 「青山のカフェ」

私は涙を流し、どうやら別れ話になりそうな雲行きであった。外は霧雨が降っており、深刻なムードも最高潮の時、突然隣りのテーブルにいたサラリーマン四人連れの一人が、「それでは私、小便をして参ります」ときっぱり言って席を立ったのだ。

 私の涙は半分乾いた。

 

先ほどの小便男がまたも「私のパンツのシミでございますが、それは薄い黄色でございます」とキッパリ言うのが聞こえた。

ーー中略

今思えばあの時のあの男は、私達の人生の中で重要なポイントを占める役割を果たしているのである。 

 

 

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