ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

『失敗の本質(中公文庫)』

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91年。戸部良一野中郁次郎ほか著。

組織論は、社会学・政治学・心理学・経営学との学際的な学問領域。

太平洋戦争史に、社会科学的分析を導入しようという意欲的な大著。

以下、メモとまとめ。

 

 

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ノモンハン事件

敵情不明のまま用兵規模の測定を誤り、いたづらに後手に回って兵力逐次使用の誤りを繰り返した。



 

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ミッドウェー海戦

山本五十六は、アメリカとの国力差から絶対に長期戦に引き込まれてはならないと考えていた。山本の作戦の核には航空決定思想がある。

(⇔海軍内では、日露戦争以降、艦隊決定思想が支配的だった)

 

 

 

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ガダルカナルの戦い

「それは帝国陸軍の墓地である」と後に語られる。
陸海軍の間の相互中枢における長年の対立関係と、作戦司令部の兵站無視、情報力軽視、科学的思考方法さえ軽視した。
※日本軍の作った飛行場も米軍に奪われる

 

 

全般的に、日本軍において、

・作戦目的の曖昧性があり(しばしば、陸海軍両論併記的折衷案が採用された)


・対人関係、人的ネットワーク関係に対する配慮が優先し、失敗の経験から積極的に学び取ろうとする姿勢に欠けていた

 


・進化論において、「恐竜は、中生代のマツ・スギ・ソテツなど裸子植物を食べるのに徹底的に対応、適応しすぎて特殊化し、ちょっとした気候、水陸の分布、植物の変化ぶ最適応できなくなった」="適応は適応能力を締め出す"


・米国では大統領が陸海間を統合するのに対し、天皇という実態のない統治機構をもつ


・軍事組織とカトリック教会は、その価値の反復、伝承のために最も頻繁に儀式を行う組織である


・海軍なら、少将で四十歳、大将は五十歳


・組織内に緊張を創造し、多様性を保持して高度に不確実な戦争に備える


第一次世界大戦という近代戦あるいは消耗戦を組織全体がまともに経験してこなかった。外部環境からくる脅威をテコにして、過去の戦略、行動様式を自己変革する機会を失った

 

「日本軍の最大の特徴は言葉を奪ったことである。」

組織の末端の情報、問題提起、アイデアが中枢につながることを促進する「青年の議論」が許されなかった 

 


最後は、まさに企業組織に属する我々末端の人間でもハッとさせられるような問題提起で締めくくる。

日本軍同様、日本の大企業の多くが、過去の成功体験が上部構造に固定化し、学習棄却ができにくい組織になりつつあるのではないだろうか

 

 

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