『掏摸(中村文則)』
財布はポストに入れれば、郵便局から警察に行き、免許証の住所に戻る。指紋を拭き取り、ポケットにしまった。ホストは薬でつかまりかもしれないが、それは自分に関係したことではなかった。
この金は昨日の痴漢から取ったものだが、その前の所有者は不明だった。この金はそれぞれの人生の瞬間を、見ているのだと思った。
時間には、濃淡があるだろ?ギャンブルとか、まあ投資詐欺が成立する緊張もそうだよ。…法を超える瞬間、ヤクザの女とか、やったらやばい女と寝る瞬間とかさ・・・、意識が活性化されて、染み込んでくるし、たまらなくなる。
惨めさの中で、世界を笑った連中だ
女をベッドに倒しながら、佐江子のことを考えていた。
貴族はその少年を見ながら、こいつの人生を、自分が完全に規定してやろうとした。
僕は、子どもという存在に何かを言う生き方を、していなかった。
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