『緩慢な統合 欧州の過ち(ブレンダン・シムズ@読売新聞 6月19日付)』
今のEUはドイツが支配的だ。そのありようは神聖ローマ帝国(962年〜1806年)に似ている。この帝国は国々の緩やかな集合体で、政策決定の基本は合意の形成だった。帝国の最高裁判所が法治に目を光らせた。このはるか昔のドイツ流の政治文化をEUは継承したとも言える。
EUは近年、新たな脅威に直面している。東にプーチン専制的なロシアがあり、中東に過激派組織「イスラム国」が出現し、EU域内にはそれに連なる過激派が巣くう。大衆を扇動するポピュリストの欧州会議派が英国だけでなく域内に拡がっている。
大陸欧州でドイツを除き、こうした脅威に単独で対処できる力を持つ国はない。小さ過ぎ、弱過ぎる。一方,ドイツは大き過ぎ、独自行動は許されまい。
欧州統合の過ちは漸進主義にある。全てが緩慢だ。だが、婚約期間が長過ぎれば、結婚ではなく、涙で終わる。スピードが重要だ。