「令和日本の敗戦 (田崎 基・2020年4月)」
田崎基氏。神奈川新聞記者。78年生まれ。
「敗戦」というワードだけど、白井聡さんを連想する人間は彼の著作をよく読んでいる証拠だろう。案の定、本書にも白井聡氏が巻末寄稿している。
問題意識のある人の著作は、目次ページの見出しを追うだけで、
このまま週刊文春の中刷り広告見出しになりそうな引きの強いワードのオンパレード。こちらのインスピレーションを触発する。
/いいものを生めない社会/
/魅力ある労働環境がなければ生き残れない/
/シナリオの逆をいく「官製景気」/
/数字よりも感性」と喝破する財務相/
/極右政権からの発信/
/姑息な改憲案/
/違憲状態を自称した初の首相/
/なぜアベノミクスは成功しなかったのか/
令話において「戦わずして敗戦する国」の形
私たちの社会はいつのときも個人のモラルで支えられいる。
( 繰り返される愚行は、これまでの国の政策によって生み出されたものだと私は思う)
プレカリアートユニオン
団体交渉を拒否する企業には、本社ビル前に街宣車を横付けし、要求を告げる。
「原子力もリニア高速鉄道も、もう時代遅れ。世界を見渡せば、太陽光や風力といった再生可能エネルギー産業の方が圧倒的に成長している」
→21世紀に深刻な原発事故を経験したこの国で、どうして再生可能エネルギーが推進されず、イノベーションされなかったのか。コスト問題は理由にならない。世界共通の問題だったはずだ。変化を恐れ、利権を優先した政治の責任は重い。
大企業の多くはアベノミクスで得た利益を賃上げや設備投資に回さず、内部留保として蓄えたのだ。
メーカーは価格の引き上げに及び腰だ。その理由は「上げれば売れなくなるから」に他ならない。これこそ、いまが「不景気である」ことの証左である。
🔸意図的かつ短絡的操作
これまで毎月公表されてきた「実質賃金」だが、2018年から集計方法を変えたにもかかわらず、2017年の数値とそのまま比較したことで、実際より高い伸び率が公表されていたのだ。
明石氏(明石順平「アベノミクスによろしく」)が試算した数値について問われた厚生労働省の担当者は手を震わせ、明言を避けようといいよどみながらも、やがて認めざるを得なかった。
・ 「完全に「意図的な偽装」と言っていい
・統計を扱っている者が見れば確実に気づかれる短絡的な偽装
アベノミクスという歴史的に類を見ない壮大な社会実験が「大失敗に終わった」という結論はもはや出ている。
厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、世帯年収を低い順に並べたとき中央に位置する「中央値」は、ピーク時の1996年(550万円)と比べ2018年は約23%も下落し、423万円となっている。
「日本軍が負け始めてからの戦争指導者と重なって見える。場当たり的な弥縫策で「負けている現実」から多くの人の目を逸らそうとする。」
山崎正弘
原発をやめられない日本。
自然エネルギーへと舵を切れない日本。
これはかつての満州と同じだ。
現実の日本社会は、世界のどの国よりも高齢化が進行し、生産年齢人口は減少の一途をたどり、産業は衰退し続けている。
非正規雇用が無限定に拡大され、実質賃金が減り続けている。こうした状況は安倍政権によって構造的に形作られている。
いったいどこで、どの段階で、この国やその民をダメにする、負のサイクル を止められるんだろうか。
まずマスメディアがそのことに気づかなければならない。
そう、とっかかりはマスメディアであるべきなのである。
🔸権利に冷たい社会
いまだに「権利」という概念は日本社会に定着していない。その証拠に、いまの日本は権利を要求する人たちに対してものすごく冷たい社会となっている。
そもそも権利概念は、個人のエゴイズムを認め、それが衝突することを前提に存在している。だが、エゴイズムは存在しない(認められない)という前提にたつと、権利の観念も必要なくなってしまう。
したがって、すべての日本人は潜在的に無権利状態にあるのだろう。だから、誰かが「私の権利を回復せよ」などと言い出すと、その人があたかも不当な特権を要求しているかのように錯覚される。
日本の未来について何のビジョンもなく、あるのは自民党支配の成功物語という記憶のみであり、そこにすがるしかない。だから東京五輪だ、大阪万博だ、という話になってしまう。
▶︎井手英策さん・慶大経済学部(財政社会)教授
・2020東京五輪後から5年間の経済成長率は推計0.5%(日本経済研究センター)。6年後から10年後の成長率はほぼ0%。
・労働力人口は間違いなく減る。設備投資は国内で回りっこない。
・頼るしかないのはイノベーションだ。
世帯年収300万円以下が全体の32%を占める現実