「性暴力が無罪になる国 弁護士・角田 由紀子」(2019年9月6日付 朝日新聞)
特に、父親から娘への継続的な性的虐待を認めながら、「娘の抵抗が著しく困難だったとは言えない」として無罪にした名古屋地裁岡崎支部の3月の判決は、驚きでした。
ーしかしなぜ、理解に苦しむような判決が続くのですか。
「男女平等の度合いを示す世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で、日本は昨年、世界110位でした。逆に言えば、110位の国でこういう判決が出る相応なのです。日本は性差別が色濃く残っているのに、それが認識できていない国なのです」
刑法が制定されたのは1907年、明治時代です。
家父長制の下、女性に選挙権もなく、結婚すると民法上は法的無能力者とされました。強姦罪は財産犯みたいなもので、権利を侵害されるのは被害に遭った女性ではなく、その夫や父でした。生きた人間としての被害者は存在しなかったのです