ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

『伸予(高橋揆一郎)』

 

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83年6月が一刷である。

第79回芥川賞受賞作品。

芥川賞に偏差値をつける」という書籍で知った。 

高橋揆一郎。カッコイイ名前。

 

伸予。元女教師。たって戦前は、って話。

30年ぶりに、惚れた教え子と会う。自ら自宅に招いて。

積極的な女である。

 

今だったら、4050のおっさんたちが喜びそうな、性愛憧憬というか設定だ。

自費出版でこういうこと書きたいおっさんたちがごまんといるんだろうな、みたいな印象だけれど、当時は新しかったんだろ見える。

 

 

「おとうさんはね、まじめ一点張り。お酒だって付き合いだけ。わたしが頼んで浮気の一つもしてちょうだいといったぐらい、でも浮気はしなかったみたい」

 

p142 

 

 

「恐れ多くてとても、それにですよ、ぼくはまたあの自分の先生のことを、女学校出たての苦労知らずのお嬢さんの気まぐれかと思ってい」

 

p153

 

 

・女学校三年のとき、学校で戦地慰問の手紙を書かされたのがきっかけになった。

・女学生の手紙は兵隊に人気がある、とりわけ、若い将校に人気があるという離しだった。

 

p183

 

迫る男の頬を夢中で張った

 

p184

 

 

蝉の声が聞こえている。半分だけあげた窓のレースのカーテンがまつわりついていた。善吉のいうままに下のもとを脱ぎ捨てた。「上はいや」と伸予はいった。紺のブラウスを着たまま畳の上に横たわり、半眼になって舟型の天井を見ていた。

 

口を結んで善吉の動きに耐えていると、べつな涙がにじんでくる。やっと、という思いが先に立つ。体がよろこんでいるところはなかった。閉じ込めてしまったものは容易に目をさまさないものかも知れない。体中に力をこめてしがみついてた。

 

p205 

 

 

けっきょくのところ過去というものはなにやら宗教みたいなものかも知れないと思った。ねうちを信じたい人はそれにすがるけれど、それを認めない人にはたいした意味はないのだろう。

 

p224

 

 

 

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