ここがパンチライン!(本とか映画、ときどき新聞)

物語で大事なのはあらすじではない。キャラクターやストーリーテリングでもない。ただ、そこで語られている言葉とそのリアリティこそが重要なんだ!時代の価値観やその人生のリアリティを端緒端緒で表現する言葉たち。そんな言葉に今日も会いたい。

2017-01-01から1年間の記事一覧

『カレー勝負(美味しんぼ24巻)』

カレーショップの主・栃川。 「この店のカレーが本物だと言ったからには答えてもらおう。まず第一にカレーとは何か?」 ターメリックとクミン(あと胡椒と唐辛子)があればなんとなくカレーらしくなる。 究極のカレーはマッドクラブ、鰹節。焼いた蟹の風味と…

『男はつらいよ 32 〜口笛を吹く寅次郎 〜』(1980年)

83年作。舞台となる備中は高梁(岡山県)は、さくらの夫・博の生まれ故郷。 マドンナは竹下景子(エリートと離婚して出戻ったお寺の娘、朋子役)。 当時、お嫁さんにしたい女優ナンバー1だった竹下景子。 と、当時の彼女の出演作などを検索していると謎のタ…

『海街ダイアリー』

四人の姉妹を観るための映画かな。 たまに流しておいてもいいって思う。 現代版『細雪』というか。 四姉妹の織りなす、鎌倉での春から夏にかけての美しい情景だ。 長澤まさみ(次女よしの)が男と明かした朝のシーン、から始まったり。 四人で浴衣着て、花火…

『苦役列車』

森山未来が好演。 実にダサくて、カッコ悪い。情けなくてよい。 「女が裸で自分でやってるの眺めながら、ギャルにしごいてもらうのは本当に気持ちいいんだから。」 「昔はやらせてくれたじゃねーかよー」

『父として考える(東浩紀・宮台真司) 』

父になってみて再読。 父なる実感、って部分の吐露は相対的に少ないように思われた。 見田宗介氏が言うには、女たちが保守化したのではなく、仕事も子育ても両方選べるようになった段階で、あらためて比べた上で子育てを選ぶようになった以上、子育てしか選…

『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か(平田オリザ)』

4年前くらいに読んでいて本棚にささっていたものを再読。 こんなにも太字ばかりの本を、まだ取り扱っていなかったなんて。。。 無能。。 コミュニケーションにおける無駄(ノイズ)の大切さや、学校の授業はメチャクチャに教えた方がいい」といった まさに…

『北の国から2002 “遺言”(後編)』

まあなんというか、完結編ということもありタイトルも五郎の「遺言」とあることから、過去を振り返るイメージですな。 手間返し といって、村のおっさん達が協力して家を建ててる。 中ちゃん(地井武男)の息子(柳葉敏郎)のための家だ。 純は草太兄の牧場…

『コンプレックス文化論(武田砂鉄)』

砂鉄氏の切れ味するどい舌鋒はあまり発揮されず、個々のコンプレックスに関連づけられるタレント系エピソードもやや貧弱だ。 意外にも本人の関心とは、遠いところの企画だったのではないか。 働かざるもの食うべからず、との形容を好みのは曾野綾子だが、そ…

『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝(栗原康)』

口ではわかったおいっておきながら、速攻でそれを破ってしまう。 ▼糸島郡今宿村(現 福岡市西区) ▼上野高等女学校(現 上野学園)へ ▼新任の英語教師 辻潤 ▼雑誌『青鞜』の、貞操論争、堕胎論争、廃娼論争。 遭いたい。行きたい。僕の、この燃えるような熱…

『ドキュメンタリーは嘘をつく(森達也)』

言い換えれば報道は、とても危なっかしいバランスの上に立っている。 自らが中立で公正であるとの強い思い込みは、自らが正義の側に立つとの思い込みにあっさりと短絡する。 自らが正義であると思い込んだメディアは暴走する。 主張は明快だし、歯切れも良い…

『罪と罰 下(ドストエフスキー 工藤精一郎訳)』

わたしは神経質なものですが、あなたのピリっとわさびのきいた言葉にはすっかり笑わされてしまいましたよ。 まったく、科学ですからな、現代は・・・・ 鋭い頭脳というものは、すばらしいものだと思います。それは、いわば、自然の装飾、生活の慰めです。 あ…

『罪と罰(ドストエフスキー 工藤精一郎訳)』

ロージャの母: でも、ことわっておきますけど、あの方はわたしが書いたよりもいくらかやわらかく言ったんですよ。それがわたしはその言い回しを忘れて、意味だけを覚えているものだから。 母からの手紙を読んで、ラスコーリニコフ: 心臓がはげしく動悸し、…

『男はつらいよ 25 〜寅次郎 ハイビスカスの花〜』(1980年)

リリーシリーズ。 博が、亀戸でリリーとバッタリ会って話す。 「それで、あの人どうしてる?寅さん。」「私も旅暮らしよ。寅さんと同じ。」 おばちゃん・つね 「ちょっと私、御不浄行ってくる」 お店休んで、水元公園行こうとしてたとらやご一行。 そんなと…

『男はつらいよ 23 〜跳んでる寅次郎〜』

小学校で書いてきた、満男の作文。 寅屋の恥、っておじさんに言われた寅は北海道へ。 車で来た男に親切にされ、白昼車の中で襲われそうになってたお嬢さん(ひとみ=桃井かおり)に、「だから、言わんこっちゃない。見知らぬ男に気やすく声をかけちゃいけな…

「北の国から 98 時代 (前編・後編)」

蛍が金を借りに歩いていた。 雪子のところに突然現れて、 「おばさん、今お金いくら持ってる?」 昇太兄のところにも訪れてきて、牛舎で交わす 「やっぱ話すな。オラ、口軽いぞ。。喋って楽になれ」 昇太兄は事業を大きくし、農業の工業化、大規模化を押し進…

『銀の匙(中勘助)』

とにかく、子ども時分の思いや考え方をここまでよく覚えているな、と思う。 幼い頃からもの心つくまでの主人公(否、これは筆者そのものだ)の心情を、みずみずしくごう自然な文章で綴られる。 主人公は、体が弱く育ちの遅れた神田っ子。 甘えん坊の幼少期。…

『影裏(沼田真佑)』

今日の 芥川賞受賞作発表の前に上げておくんだった。 先ほど、深夜のニュースで作者と受賞作の短評を聞く。 「震災小説」と説明されていた。 記者会見での質問にあったのだと思うが、「自分は岩手に住んでいるので、禊のつもりで書いたつもりが、ないわけで…

『戦場に立つということ(2016年9月6日付 朝日新聞オピニオン面)』

デーブ・グロスマン(戦場の心理学専門家) 戦場に立たされたとき、人の心はどうなってしまうのか。国家の命令とはいえ、人を殺すことに人は耐えられるのか。 「米陸軍のマーシャル准将が、第二次大戦中、日本やドイツで接近戦を体験した米兵に『いつ』『何…

『相手の話、聞こうよ(2017年4月18日付朝日新聞)』

佐々木憲昭・前衆議院議員(共産党) 小泉純一郎さんには2002年2月の予算委で鈴木宗男氏の疑惑を追求した時、「よく調べているなと感心した」と答弁いただきました(笑)。敵ながらあっぱれと。違う立場でも対話は成り立ちます。 ところが安倍さんは、…

『パリ協定へ背向けた米(2017年7月5日付朝日新聞)』

米本昌平・東京大学客員教授(専門は科学史、科学論) 国際社会では、ジオエンジニアリング(気候工学)で温暖化を抑えるというアイデアが出てきた。 最も議論になっているのが、軍用機で成層圏にエーロゾルを注入し、地球を冷やす方法です。1991年のピ…

『メディア真っ二つ?(7月13日付 朝日新聞オピニオン面)』

大石裕・慶応大教授(ジャーナリズム論) 読売新聞の前川・前文部科学事務次官の「出会い系バー」を巡る報道は、政権とメディアが保つべき一線を超えた、大きな問題を持つものでした。 一方で記者側は書きぶりを工夫するなどして一定の緊張関係を維持してき…

『不便は手間だが役に立つ』

川上浩司(京都大学デザイン学ユニット特定教授) 10年ほど、不便がもたらす便益「不便益」を研究しています。昔は良かったという懐古趣味でも、何でも不便にすればいいという考え方でもありません。考察から得た結論は「主体性が持てる」「工夫ができる」「…

『暴走する忖度(7月7日付 朝日新聞朝刊オピニオン)』

金田一先生、この春列島を一世風靡した「忖度」についてかく語りき。 深い。言語学者としてあまりに政治家の言葉についての批評性がある。 このテーマでこういう人選ができるのもさすが編集者といった脱帽感。 朝日新聞はオピニオン面がほんとに面白いんです…

『知性の顛覆 日本人がバカになってしまう構造(橋本治)』

7/9付朝日新聞朝刊「著者に会いたい」での新作新書、著者インタビューで橋本治。 <「自分のアタマで考えたいことを考えるためにするのが勉強だ」ということが分かると、そこで初めて勉強が好きになった> 反知性主義を読み解いていくなかでたどり着いたの…

『星の子(今村夏子)』

「第三回 勝手に芥川賞選考会」を来週火曜(7/18)に控え、全候補作品を読みました。 今回はノミネート4作品と例年に比べて候補作品が少なかった。 2017年上期 候補作品 芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会 今村夏子さんは前回の『あひる』に続き…

『男はつらいよ 〜寅次郎相合い傘〜』

この「男はつらいよ」と超絶バッドエンド系のハリウッド作品を交互にみて、ブログアップしてる辺りが文科系ブログのダイナミクス。世界観が違い過ぎてクラクラします。 ちょうど、映画終って劇場から出てきたらまだ昼間で、渋谷の雑踏を行き交うにどうしよう…

『レボリューショナリーロード(2008 サム=メンデス)』

人生にとって、退屈って最大の驚異。 誰もがみんなそんな状態からは逃げたくてしょうがない。 さらに、それが夫婦関係であったならば。夫婦それぞれが人生において「退屈。」と感じるようになったならば。 これは、そんな「人間の退屈」という意識と空間に差…

『男はつらいよ 〜下町慕情篇〜』

貸し部屋の札を見て、怒った寅さん。 家を出て、不動産屋に紹介してもらった部屋がとらやだった。 「バカ野郎!ここは俺んちでいっ」 歌子さん(吉永小百合)たち、女の三人連れが金沢旅行で。 別れ際に写真撮るとき、「ハイ、チーズ」ではなく、「ハイ、バ…

『無意識の構造(河合隼雄)』

彼女は耳が聞こえないので、筆談をするわけだが、筆談をかわしながら、こちらはそこに書く質問などを声に出していいながら書いてゆく。そして、彼女はだんだんと筆談の中にひきこまれてきたと感じたとき、それに関連したことを紙に書かずに口頭で質問する。…

『もものかんづめ(さくらももこ)』

ちびまる子ちゃんの作者、さくらももこのエッセイのセンス。ワーディングの絶妙さ。視線のシニカルさやユニークな文章には定評がある。 「健康食品三昧」 ケーキ屋の試食品をばくばく食べている女がいる。それが正午の人であった。 彼女は花柄のブラウスにパ…